晩秋

 

 

何となくぼんやりしていたら、

さっき、外出したばかりの妻が戻ってきた。


「ねえ、自転車のところまで、来てくれる・・」

「えっ、どうして?」

 「とにかく来てほしい・・かまきりが・・。」

「すぐ。行く。」

 

僕は子どもの頃、かまきりを捕まえるチャンピオン。

(そんなタイトルがあるわけじゃないけど)


 

 

 

 

あのシャープなボディーと葉っぱによく似た緑色は、

澄み切った秋空によく似合う。


「弱ってるじゃん。これがこわいの?」

「こわいんじゃないんだけど、挟まれそうで。」

得意げに持ち上げると・・弱っているのに

僕の人差指を思いっきり挟んだ。

 

「イテテテ、強い!」

「大丈夫?」

 

痛さを我慢して自転車置場から、

緑がありそうな方へ移動・・一件落着。

 

 

(かまきり・・もう羽根先が茶色だったなあ)

 

ジンジンする人差し指をよそに

そろそろ晩秋を感じる。