ある寒い日。

 

 

マイナス四度になったあの日だ。

 

冷たくて空気を吸うのをためらうぐらい。

でも、悪い事ばかりじゃない。 

空の青が透き通って、寒さを除けば気分が良い。

 

そんな青に魅かれてか、空が広く感じる

矢田川土手に足が向いていた。

 

 

その道草の途中、こんな母子に出会う。

 

  

 

 

母親は、これ以上ない優しい声で

 

「今日は、頑張れる?」

 おでこをくっつけながら、話していた。

 

「うん・・がんばってみる。」

 

「えらいね〜ママも今日、お仕事がんばるよ。」

 

「うん・・・が・ん・ば・・・る。」

 

 

 

 

「でも、やっぱり行きたくない・・」

 

「一緒にがんばろう。」

 

「でも〜でも〜行きたくない・・」

 

「たっくんががんばったら・・

 お昼に多分・・いいことあるよ〜」

 

「え〜ほんとに・・?」

 

「ん・・うん・・多分ねええ・・」

 

「でも・・行き・・」

 

 

そんなやり取りを見て

(うちにも、こんな時期あったなあ)

と少し懐かしく感じながら、

母子の隣を早足で通り過ぎた。