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 2019年に求龍堂から出版した「齋正機作品集」にも紹介されています。

 

 

 

1、出発

 

“ふくしまものがたり” はこの道の絵から始まります。

この絵は福島市の庭坂付近の一本道を描いたものです。  

 

 

 「聲〜こえ〜」(佐藤美術館所蔵) 150F      日本画  修了制作1994年 

 

 

 

1994年のこの年、齋正機は26歳、東京芸術大学の大学院を終了する学生時代最後の絵でした。

 

この時代背景としてバブルが崩壊し、それは勢いづいていた日本画壇に急ブレーキをかかり、それと同時に新しい日本画を追求する機運が画壇に高まって来た時期です。

 

この時代背景にして描かれた作品、題名は「聲(こえ)」

故郷、過去からの解脱、これからの未来をテーマに描かれた絵です。

 

色彩を排除し、金箔と黒、そして盛り上げ絵の具を使うことで情緒性の排除を試みました。ミニマル化して何が残るのか、そしてこれから何が必要なのかを知るための作品でもありました。

 

 

 

 

 

 

2、新しい表現へ

 

 

大学を修了し、予備校講師をやりながら制作を続けていきます。日々、学生を教えながら作品を試行錯誤を繰り返します。

 

「今までに無い新しい表現を目指す。」

 

これはその頃の齋の考え方の基本でした。

河合塾美術研究所からのオファーで名古屋に移り住み、名古屋の学生にデッサン、水彩画を教える毎日の中、次第に制作時間が限られるようになります。

 

1996年頃のこの作品には、『日々に思い付いたことを羅列して作品化する』が中心です。その痕跡を構築し構成してまとめ上げています。

 

ただ、なかなかコンセプトや意図が伝わらず、多大な焦燥感から疲弊していきます。そして、次第にタブロー中心からドローイング中心の制作スタンスに変化していきます。

 

 

「冬の冷たくて暖かいリズム」   50S              日本画       1996年制作

 

「夏の煙を吸いこむ黒」     50S              日本画      1997年制作

 

 

 

 

3、日々のドローイング

 

 

齋はタブローの新しい表現に限界を感じ、一度タブローを制作活動を止めています。

 

1996年、1997年はもう一度原点に立ち帰ろうと、日々のドローイングを中心にする毎日でした。

そして、彼はドローイングの世界に新しいものを求められないかと言う考えに変化するのです。

 

 

 

1996年から続いているハガキ大のエスキース帳、多い時は一ヶ月に3冊ぐらいも描いています。

 

子供、風景、昆虫、記号、看板、言葉などすべてをスケッチとしてメモしました。

 

 

 

鉛筆ドローイングの例

 

 

色鉛筆ドローイングの例

 

 

 

 

4、原点の風景

 

 

1997年の際はほとんどがドローイング作品です。 それは自身が作り上げる

日本画作品への疑問から生じたタブロー表現からのエスケープでもありました。

 

そんな中、齋は会津地方を旅をします。

そして、喜多方市付近で原風景を発見するのです。

きっかけは土蔵の素朴な色彩でした。

 

そのときの齋の心の動きを表した文章が残っています。

 

  会津の田んぼの中に“ポツン”とあった土蔵をみていた。そのうち

  湧き水のように溜まった涙が目から落ちてきた。

  (綺麗だなあ。ただ、ただ綺麗だなあ。)

  土蔵のある風景をしっかりと見つめたのは小学校以来…。

  そして、私の原点だった。

 

その感動から日本画制作の新しいモチベーションが生まれます。

 

(美しいと感じたのこの感覚を伝えたい)

 素朴で目に優しい、この感覚を日本画で再現したいと強く思ったそうです。

この時偶然にも喜多方市美術館主催『’98 ふるさとの風景展』の

募集要項を手に入れて(具象画で再出発しよう)と決心。

 

心機一転、原点の風景画からの再出発します。

そして、名前も斎藤正機から齋 正機へ変えます。

これが、“ふくしまものがたり”のはじまりです。

  

 

 ツチイロノクラノキモチ 30F       日本画  1998年制作

 喜多方市美術館所蔵

 

アカイヤネノキモチ   30F       日本画  1998年制作

 喜多方市美術館所蔵 

 

その処女作二作品は日本画とアクリル絵の具を併用した

ミクストメディアの風景画です。

 

しかし、風景具象画とした表現は、それまで描いていた

ドローイングの感覚を利用した素朴で素直な表現でした。

 

この二つの作品は喜多方市美術館主催『’98 ふるさとの風景展』 

において最優秀賞を受賞します。

 

 

 

 

 

5、福島の風景と記憶の風景と広がり

 

 会津地方の土蔵や家並みの美しさから開眼した齋は、そこから次々と対象が広がっていきます。風景の色だけでなく今まで見逃してきたいろいろなそこから次々と対象が広がっていきます。風景の色だけでなく今まで見逃してきた福島の美しさを見つけていくのです。

 

 

ツチイロノクラノキモチ#2  変形50       日本画  1998年制作

 

 

 

 少しずつ更新されていきますのでお待ちください